大阪大学大学院工学研究科の後藤祐児特任研究員、山口圭一特任准教授らの研究グループは、ペリスタルティックポンプと蛍光顕微鏡を組み合わせ、アミロイド線維の形成過程をリアルタイムで観察することに成功しました。
アミロイド線維は、タンパク質が異常に凝集して形成され、体内に蓄積すると組織や臓器の機能を損なうことがあります。例えばアルツハイマー病では脳にアミロイドβが蓄積することが知られており、心臓や腎臓などにアミロイドが沈着して機能障害を引き起こす疾患群はアミロイドーシスと呼ばれます。
研究グループは先行研究で、ペリスタルティックポンプによって生じる強いせん断ストレスが、アミロイド形成を誘発し得ることを報告しています。(Goto Y, Ota T, Yuan W, et al. “Peristaltic pump-triggered amyloid formation suggests shear stresses are in vivo risks for amyloid nucleation.” npj Biosensing 2, 4, 2025.)
今回の研究では、心臓に沈着するALアミロイドーシスに着目し、心拍に伴う冠細動脈の血管の太さの変化によって生じるせん断ストレスと、狭い流路がアミロイド形成に与える影響を検証しました。
その結果、せん断ストレスと狭い流路が重なる環境でアミロイド形成が促進されること、さらに形成された線維が流路内に沈着・閉塞していくことが確認されました。
この現象をリアルタイムで観察する実験系に使用されたのが、高砂電気工業のチップポンプ ACP-29です。
図:ペリスタルティックポンプによるアミロイド形成誘導の概要(A)と主な研究結果(B)
引用: Goto, Y. et al., The FEBS Journal, 2026.
課題と解決
今回の実験では、心臓でALタンパク質が受ける条件をペリスタルティックポンプで模倣しながら、アミロイドが発生する箇所を蛍光顕微鏡でリアルタイムに観察する必要がありました。
当社のチップポンプは、ペリスタルティック機構を小型のPDMSチップに組み込んだ構造です。流路を周期的に圧縮しながら送液でき、その内部を蛍光顕微鏡で直接観察できます。
また、チップポンプの採用により、実験系の小型化と、1サイクルあたりの実験時間の短縮にもつながりました。
実験に使用されたチップポンプ ACP-29
また、ポンプ内部でのアミロイド形成に加え、微細血管網を模した格子状マイクロ流路を用いて、形成された線維が流路内に沈着・閉塞していく様子も観察しました。
本研究成果は、2026年8月25日に国際学術誌「The FEBS Journal」に掲載されました。
(Goto Y, Yamaguchi K, Nakajima K, et al. “Constrictions and shear stress are key determinants of amyloidogenic light chain (AL) amyloidosis.” The FEBS Journal, 2026.)
今回の研究では、アミロイド線維による微小流路の閉塞が、虚血や組織障害につながる可能性も示されました。これは、従来注目されてきた細胞毒性とは異なる新たな視点です。
本成果は、アミロイド形成メカニズムの理解を深め、将来的なリスク評価や予防・治療法の開発につながることが期待されています。
高砂電気工業は今後も、研究者・技術者が求める流れや送液条件、装置構成の実現を、流体制御技術を通じて支援してまいります。
* チップポンプACP-29 / QCP-29
ペリスタルティックポンプの送液機構を小型のPDMSチップに組み込んだポンプです。
省スペースな実験系やマイクロ流体システムへの組み込みに適しています。
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